Z氏にとっては、今回が3社目のREITの上場ということになります。
他の2社は居住用の不動産専門に投資するエクイティ・レジデンシャル・プロパティズ・トラストと、移動式住宅投資専門のマニュファクチャード・ホームズというREITで、いずれも上場させることによって巨額の資金調達に成功しています。
資本市場へのアータプロローグこんなにも違う日本と世界の不動産投資市場クセスが発達し、流動性に優れたアメリカの市場では、銀行から融資を受けて不動産に投資するというやり方自体が、既に時代遅れなのです。
2.不動産の適正な時価(マーケットバリュー)何の価格をもって不動産の適正な時価とするのかという問題は、いまだに世界共通の難問といえます。
不動産鑑定理論では、土地の適正価格は収益還元法、取引事例比較法、原価法の3つのアプローチによって求められるとされていますが、実務的には1つだけの共通価格を導き出すのは困難です。
例えば日本では、バブル時代に取引事例比較法だけをあまりに重視した値付けを続けたために、収益性を無視した割高な地価相場が形成された経緯があります。
かといって、いまさら収益還元法を重視しようとしても、この異常な低金利の環境下では収益価格の継続性そのものに自信がもてない状態が続いています。
不動産に限らず、資産価格はすべてマーケットで決定されるのが最も望ましいことです。
株式にしても為替にしても、世界中の投資家が一瞬にして価値判断ができる取引相場があり、取引市場があるからこそ共通の資産価値というものが成立するのです。
3.不動産も投機的マネーゲームの対象アメリカの株式市場は相当過熱しています。
特に97年8月6日に史上最高値を更新した後、10月に史上最大の下落幅を記録するなどいささかオーバーシュート気味の様相を呈してきました。
こうしたなかで、アメリカの投資家は明らかに不動産投資によって株式投資のリスクヘッジを行おうとしています。
その影響で不動産市況も過熱感が拭えず、REIT相場も異常な高値と増資ブームが続いています。
この4年はすなわち、市場価格(マーケットバリュー)こそがベストなのです。
この意味で、アメリカの不動産市場は世界で最も理想的なマーケットだといえるでしょう。
97年初頭で証券取引所に上場しているREITは全部で196銘柄(ニューヨーク証券取引所150、アメックス32、ナスダック14)あります。
不動産のタイプ別では、最も多いのがリテール(ショッピングセンター)の45銘柄、次にレジデンシャル(住居系)26、オフィス35、ホテル14、ヘルスケアー2一の順になっています。
これらの銘柄が日々時価で取引され、価格の洗い替えが行われているところにアメリカ不動産市場のダイナミズムがあるのです。
REITの時価総額は飛躍的に増大し、97年6月時点で1057億ドル(約14兆円)に達しています。
また、97年上半期の発行額も前年1年分に相当する120億ドルを上回っています。
アメリカでは、空前の株式投資ブームと相まってREITが投機的なマネーゲームの対象になり、株と不動産で相乗効果をあげているのです。
REITは、資金調達だけに積極的なわけではありません。
本業の不動産投資に関してもかなり積極的に動いています。
最近も、Wホテルを傘下に持つホテル専門のREIT、スターウッド・ロッジングがSホテルを持つITTを133億ドル(一兆7千億円)で買収すると発表してアメリカ中を驚かせたばかりです。
しかも、買収金額の8割は自社株で支払う内容の提案です。
ホテル専門の不動産投資信託が、ホテルチェーンのM&Aを株式交換で提案するところに、いまのアメリカ金融市場の熱狂ぶりを感じ取ることができます。
今回のZ氏のケースでも、一株当たりの発行価格2一ドルは上場初日に26ドルと23%も上昇しました。
簿価30億ドル(3900億円)の不動産が、上場によって40億ドル(5200億円)の時価につり上げられたようなものです。
これによってゼル氏個人の資産価値も、3億8000万ドル(494億円)に跳ね上がったことREITやマスター・リミテッド・パートナーシップ、それにCMBS(商業モーゲージ担保証券)などは、主にニューョークのウォールストリートでつくられる不動産投資商品と言っていいでしょう。
これらの商品は、ウォールストリートに基盤を持つインベストメントバンク(投資銀行)が、大量の優良不動産を証券化して株式市場に上場させ、発行証券の引き受け業務を一手に請け負う証券会社主導のビジネスです。
アメリカの不動産がマネーゲームの対象になりつつある一番の原因は、これらインベストメントバンカーの積極的なビジネス展開にあるのです。
確かにニューョークには世界最大の金融市場がありますが、アメリカの金融市場はニューヨークに限られるわけではありません。
ニューョークの対極には実物(商品)になります。
株式上場は資金調達手段としても、また会社(不動産)オーナーの資産再評価と一擢千金の手段として、アメリカではすっかり定着した感があります。
いまや不動産こそが、証券市場を通したマネーゲームの格好の対象になっているのです。
現在シカゴ商品取引所(CBOT)では、不動産の先物商品が上場されようとしています。
具体的な先物対象としては、アメリカ都市部の独身者用住宅指数をベースにした先物商品が検討されています。
日本人は、不動産といえばストックとしての地価の上がり下がりだけを気にする傾向にありますが、アメリカではむしろ不動産のフローの動きを重要視します。
したがって、不動産先物の対象として採用される指数もすべてフローの指数ということになります。
不動産のような実物資産の先物取引といえば、期限到来後に不動産の現物を引き渡す義務が発生すると思われる方がいるかもしれませんが、最近上場されている先物商品は、ほとんどすべて現物の引き渡しを伴わない新しいタイプの先物と考えた方がいいでしょう。
独身者用の住宅が象徴する景気のトレンドを、不動産の先物を使って売買するという認識です。
さらにシカゴオプション取引所(CBOE)では、前述したREITのオプション取引の導入を検討しています。
不動産の先物に続いてオプション取引が可能になれば、取引市場と金融の先物市場の中心地シカゴがあります。
そして、アメリカの不動産投資市場も、ニューヨークの金融市場のみならずシカゴの先物市場にも広がっているのに不動産に限定したデリバティブ(派生商品)市場ができることになります。
オプション取引とは、「売買する権利の取引」のことで、「買う権利」(コールオプション)と「売る権利」(プットオプション)の2つの取引を指します。
いずれの権利も売買の対象になりますから、「買う権利」を買ったり、「売る権利」を売ったりすることができますし、その反対の取引も可能です。
投資家は、将来不動産が値上がりすると思えばコールオプションを買い、値下がりすると読めばプットオプションを買うことになります。
相場が当たればオプションのプレミアムが手に入り、外れればオプションを行使する権利をギブアップするのが取引の基本です。
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